【目 次】
2018年11月25日、日帰りバスツアーで貴船神社と伏見稲荷大社を参拝。日帰りといっても、出発は前日11月24日の新宿夜発です。
タカオカミとクラオカミの神とは?
タカオカミの神は「高龗神」、クラオカミの神は「闇龗神」と表記されます。
「愛するイザナミの命を、たった一人の子の命とかえるとは思いもしなかった」
カグツチを生んだイザナミは、子の火力でほと(女陰)をやけどし、死んでしまいました。イザナギはイザナミの亡骸を埋葬しましたが、悲しみはいつまでも癒えません。ついに、イザナギの悲しみは怒りに変わり、十拳剣(とつかのつるぎ)を手に取ると、カグツチの首をはねました。
『日本書紀』では、この時カグツチの血からクラオカミの神が生まれたとあります。
タカオカミ(高龗神)
「高」は高い峰・天の高み。そこにあって雨を司る山の神、雷神、龍神がタカオカミの神です。
クラオカミ(闇龗神)
「闇」は、昼でも暗い木々に覆われた森や谷をイメージさせます。鬱蒼とした峰の中を渓流となって流れる水に宿る神です。
貴船神社[本宮・結社・奥宮]
貴船神社[本宮]
鳥居から見ると、宿場町のような情緒があふれています。後で本宮から奥宮まで歩く7〜8分の渓谷沿いの街並みも同じように情緒があります。
鳥居を入ると、まずは有名な灯篭の階段が目に入ります。「あ〜、貴船神社に来たんだ!」と、とても感慨深くなりました。
鳥居を入るとすぐ右にそびえているケヤキのご神木
貴船の地名の[由来]ご神木の桂
灯篭の階段を上り、門を入るとすぐ右にご神木の桂の木があります。樹齢400年、樹高30メートル。根元からいくつもの枝が天に向かって伸び、八方に広がっています。
貴船は古くは「氣生嶺」「氣生根」と書かれていました。大地のエネルギー「氣」が龍のごとく立ち昇るところという意味です。この桂の木が、それを象徴しています。
神道では、体内の「氣」が衰えることを「気枯(けが)れ」といい、貴船神社を参拝する人々はご神気に触れ、気力が充実してきます。
ご神木の桂の木と並んいる龍船閣
貴船神社の本宮
龍船閣の前の階段を上がると、本宮があります。神職さんが、朝のお勤めをしていました。
絵馬発祥の社(えまのふるさと)
歴代の天皇様より、日照りの時には黒馬、長雨の時には白馬または赤馬を献げてご祈願される例になっていました。時には、生馬に代えて「板立馬」を奉納しました。この「板立馬」が絵馬の原形、と説明されています。
石庭・天津磐境(あまついわさか)
昭和の作庭家の第一人者・重盛三玲氏が昭和40年(1965)に造成。古代の人々が神祭りを行った神聖な祭場「天津磐境」をイメージして造った石庭です。貴船川から産出する貴船石は、緑や紫色した美麗な水成岩(粘板岩や砂岩)で、庭石、盆栽石の名石として、その数も少なく珍重されています。
貴船神社の水占(みずうら)みくじ
- 水に浮かべると文字が出ます。
- 水占みくじQRコードを読み込みます。
- 好きな言語を選ぶと、訳語が表示され、さらに音声も聞くことができます。
- 幸運を願いながら、水占みくじを所定の場所に結びます。
貴船神社・奥宮へ
馬の彫像の先の階段を降りて、鈴鹿川に架かる橋を渡り、渓谷沿いのやや登りの道を歩いていきます。7〜8分ほどで奥宮につきます。中ほどに中宮ともいう結社(ゆいのやしろ)がありますが、2017年の台風21号でご神木が倒れ、社が倒壊して入れませんでした。
貴船神社はの参拝は、元来は本宮→奥宮→結社の順番に参拝します。
渓谷沿いの道はとても情緒があり、あっという間に奥宮についてしまいました。
貴船神社[奥宮]
奥宮の前に樹齢1000年の相性の大杉。二つの樹が寄り添っています。
つつみヶ岩。貴船石特有の紫に輝き、重さ43トン
鳥居と思ひ川にかかる橋
立札の説明によると、
夫の愛を取り戻そうと思い悩んでいた和泉式部は、貴船詣でを思い立ちました。当時は奥宮が本社で、参拝者はこの谷川で手を洗い、口をすすぎ、身を清めてから参拝しました。この谷は禊ぎの川、物忌(ものいみ)の川だったのです。禊ぎの川だった「おものいみ川」が和泉式部の恋の話と重なり、「思ひ川」と呼ばれるようになったとあります。
遅桜 なほもたづねて 奥宮 思ひ川渡れば またも花の雨(高浜虚子)
1分ほど杉並木を歩いていくと神門が見えてきます。
拝殿横のご神木の桂の木
本殿の横に御船形石があります。
神武天皇の母・玉依姫が浪花より鴨川を遡り、貴船川のこの地に至るとき乗ってきた黄色の船を小石でもって積み囲んだと伝えられています。航海安全のご利益があります。
杉と楓(かえで)が和合した連理の杉
連理とは、別々の木が重なって一つになること。夫婦、男女の仲睦まじいことをあらわしています。
貴船神社の本宮と奥宮を参拝。最後に結社(ゆいのやしろ)を参拝して、貴船神社の参拝は完了になりますが……、
貴船神社[結社]
2017年の台風21号で、ご神木が倒れ、結社が倒壊されて入れませんでした。和泉式部歌碑も見られません。なお、[結社]は、本宮と奥宮の中ほどにあります。
そこで、この結社のご祭神イワナガヒメを詳しくご紹介します。(『古事記』より)
ご祭神イワナガヒメは、コノハナサクヤヒメの姉。
(天孫降臨した)ニニギノミコトは笠沙の岬で美しい乙女に会い、一目惚れしました。
「あなたは誰の娘ですか」
「オオヤマツミの娘で、コノハナサクヤヒメと申します」
「私はあなたと結婚したいと思うが、あなたはどうだろうか」
「私にはお答えできませんので、父オオヤマツミに聞いてくださるようお願いいたします」
オオヤマツミ=イザナギとイザナミが「神生み」で生んだ山の神
ニニギノミコトは、さっそくオオヤマツミに使いを出します。オオヤマツミは大喜びし、コノハナサクヤヒメだけでなく、姉のイワナガヒメも一緒に、たくさんの嫁入り道具をもたせて送り出しました。
(この頃は、姉妹を一緒に嫁がせることは普通のことです)
「見ているだけで気持ちが悪い!姉とは交われない」
イワナガヒメは、たいそう醜い容貌をしていました。酷いことですが、ニニギノミコトはそんなイワナガヒメだけを実家に帰してしまったのです。
父オオヤマツミは悲しみ恥じて、こうつぶやきました。一種の呪いの言魂です。
「私が娘二人を差し出したのは、天の神御子にどんな災難が降りかかろうともイワナガヒメにより岩のように命は安泰になり、コノハナサクヤヒメにより神御子がサクラの花のごとく栄えるように願をかけたからだった。なのに、姉のイワナガヒメだけを帰したことにより、天の神御子の命は桜の花のようにはかなく散るだろう」
こうして、神である御子の寿命も限られたものになってしまったのです。
こんな悲しい過去を持って、イワナガヒメは貴船神社にやってきたのです。「我長くここにありて、縁結びの神として世人のために良縁を得させん」酷い仕打ちをされたイワナガヒメだからこそ、縁結びや夫婦和合のご神徳があります。
貴船神社・本宮と奥宮の御朱印
最後に本宮に戻り、御朱印をいただき灯篭の階段を降りてくると、今日ご結婚されるお二人が上がってきました。
「お二人に幸あれ!」心で祈りました。
終わりに。日帰りで東京から京都まで往復!
日帰りバスツアーで、京都に行って帰れるなんて便利になりました。もっとも、1日目は夜発の車中泊でしたが。
それでも、貴船神社についてから、そこで自由時間になりますので、貴船神社や伏見稲荷大社を参拝しなくて、京都の好きな場所を観光してもいいプランでした。