日光東照宮には「七不思議」として知られる、謎めいたエピソードが数多く語り継がれています。
しかし、その内容は語り手によって異なり、「七」どころか15項目以上の候補が挙げられることもしばしば。うんちく好きな人にとっては、これほど興味をそそられる話題はないのではないでしょうか?
本記事では、そんな日光東照宮の七不思議の候補の中から特に注目される15項目をピックアップし、その背景や象徴に迫ります。
日光東照宮の七不思議には〈定説なし〉
日光東照宮の「七不思議」は、訪れる人々を惹きつける魅力的な要素ですが、実際には確固たる定説が存在していません。
これらの不思議は、歴史や文化、伝説に基づく多様な解釈が可能で、それぞれの見方によって異なる意味を持つのが特徴です。
例えば、陽明門の逆柱は魔除けの象徴とされる一方で、未完成の美を表現しているとも言われています。
このように、日光東照宮の「七不思議」は、訪問者が自身の感性や知識をもとに自由に解釈し、楽しむことができる要素です。そのため、固定された解釈に縛られない柔軟な視点が求められます。
したがって、これらの「七不思議」は、歴史的背景や文化的文脈を踏まえつつ、個々の体験として味わうことが重要です。
日光東照宮の七不思議の15候補[一覧表]
順位 | 不思議の項目 | 説明 |
---|---|---|
1 | 眠り猫 | 家康の墓所への入口にある彫刻で、平和の象徴。裏には猫が眠っているので、雀が遊ぶ姿が彫られています。 |
2 | 逆さ柱 | 陽明門の12本の柱のうち1本が逆さに設置されており、魔除けの象徴とされています。 |
3 | 鳴き龍 | 薬師堂の天井に描かれた龍の絵で、龍の頭の下で拍子木を打つと、鈴を転がしたような音が響きます。 |
4 | 三猿 | 「見ざる・聞かざる・言わざる」の彫刻で、子供の頃に悪影響を避ける教訓を象徴しています。 |
5 | 一枚石「阿房丸」 | 表門に向かって右手(東側)の石垣に使われた「阿房丸」は、たて3.25m、横6.3mの巨石。 |
6 | 五重塔の心柱 | 心柱が浮いている構造で、地震に強い免震機能を持っています。 |
7 | 石灯籠の消えない火 | 境内の石灯籠の中には「火が消えない灯籠」があり、信仰心や人々の願いが灯し続けるという意味があります。 |
8 | 想像の象 | 上神庫にある象の彫刻で、実際に見たことがない絵師が想像で彫ったため、実際の象とかけ離れています。 |
9 | 唐門の隠れた鳥 | 唐門の彫刻の中に隠された小さな鳥の彫刻で、見つけるのが難しい。 |
10 | 照降石 | 湿度によって色が変わる不思議な石で、右半分が黒いと雨が降ると言われています。 |
11 | 五重塔の垂木様式 | 垂木の組まれる様式が四層目は平行に並べられ、五層目は放射状に配置されています。 |
12 | 石鳥居前の道幅 | 参道の手前は7.5m、鳥居の近くは6.5mで、遠近法的に鳥居が大きく見える。 |
13 | 北辰の道の起点 | 北極星に向かう道の起点で、特にパワーが集中しているとされる場所(陽明門前方の鳥居前の石畳)。北極星、奥社宝塔、陽明門、江戸へ。 |
14 | 竹林で遊ぶ雀 | 眠り猫の裏側に描かれた雀の彫刻で、平和の象徴とされています。 |
15 | 伝説の職人 | 眠り猫や三猿を彫刻したとされる左甚五郎の伝説があります。 |
日光東照宮の七不思議?15項目を徹底解説
①眠り猫の裏には遊ぶ雀
眠り猫は日光東照宮を代表する彫刻で、牡丹の花の下で眠る猫の姿が描かれています。この猫は「寝たふりをして徳川家康を守っている」とも言われ、裏側には竹林で遊ぶ雀が彫られています。
猫が眠ることで雀が安心して暮らせる様子は、平和の象徴とされています。戦国時代の終焉と平和な時代の到来を表すこの彫刻は、多くの参拝者に愛されています。
>>日光東照宮の眠り猫の意味と秘密に迫る!どこにあり、作者は誰か?
②陽明門の柱の1本のグリ模様が逆
日光東照宮の陽明門には12本の柱があり、そのうち1本だけ模様が逆に彫られた「逆柱」が存在します。この柱は「魔除けの逆柱」として知られ、完璧を避ける日本の美学「未完の美」を体現しています。
「建物は完成すると崩壊が始まる」という考えのもと、未完成の状態を保つことで災いを避ける意図が込められており、東照宮の独特な文化的背景を示しています。
③薬師堂の鳴き龍
薬師堂の天井に描かれた「鳴き龍」は、龍の頭の真下で拍子木を叩くと音が共鳴し、龍が鳴いているように聞こえます。この音響効果は天井の凹凸構造によるもので、フラッターエコーという現象が関係しています。この現象は1905年頃に偶然発見されました。
なお、薬師堂は日光山輪王寺の5つあるお堂の一つであり、東照宮の寺ではありません。
鳴き龍の御朱印
④三猿「見ざる・聞かざる・言わざる」
三猿「見ざる・聞かざる・言わざる」は、悪事を見ず、聞かず、言わないという教えを象徴しています。この彫刻は、子供たちに善行を促す教育的な意味を持ちます。
それぞれ目、耳、口を覆う猿たちは悪を避ける姿勢を示しており、道徳的な生き方を指導するものとして訪れる人々に深い印象を与えています。
>>日光東照宮の三猿「見ざる聞かざる言わざる」の意味は?16匹の謎を徹底解説!
⑤一枚石「阿房丸」
日光東照宮にある「一枚石」とは、特に「阿房丸」と呼ばれる巨大な一枚岩を指します。この石は、日光東照宮の表門を支える石垣に使用されており、そのサイズは高さ約3.25m、幅約6.3mに及びます。
この一枚石は、非常に重く、どのようにして運ばれたのかが不思議とされています。阿房丸の圧倒的な存在感は、訪れる人々に強い印象を与えています。
[出典]とちぎいにしえの回廊
⑥五重塔の心柱
日光東照宮の五重塔には、中心を貫通する直径60cmの「心柱」があります。この心柱は、塔の上部から吊るされており、下端は地面から約10cm浮いています。
心柱は建物の荷重を支えるのではなく、振動を調整する役割を果たしています。五重塔は地震に強く、2011年の東日本大震災でも無傷でした。この心柱の設計は、東京スカイツリーにも応用されています。
⑦石灯籠の消えない火
日光東照宮の境内には「消えない火」と呼ばれる石灯籠があります。この灯籠は、物理的な火ではなく、信仰心や人々の願いが灯し続ける象徴とされています。
消えない火は、日光東照宮の神秘性を強調し、訪れる人々に希望や願いの実現を促す存在として親しまれています。このように、灯籠は単なる装飾ではなく、深い意味を持つ文化財です。
⑧上神庫の想像の象の彫刻
日光東照宮の上神庫には「想像の象」と呼ばれる彫刻があり、狩野探幽によって描かれたもので、実際の象を見たことがない探幽が、伝聞や書物を基に想像して制作しました。
この彫刻は、日光東照宮の三大彫刻の一つとされ、観光客に人気があります。象は当時の日本では珍しい存在であり、探幽の想像力が反映された作品として、訪れる人々に興味を引き続けています。
⑨唐門の隠れた鳥
日光東照宮の唐門には、隠れた鳥の彫刻が施されています。特に透塀の欄間部分には山野の鳥や植物が描かれ、腰羽目部分には水鳥や波の彫刻があります。
これらの彫刻は、唐門の装飾として重要で、訪れる人々に自然の美しさを伝えています。また、唐門の左右には千鳥の彫刻があり、平和や繁栄の象徴とされています。
※隠れた鳥の彫刻の写真を探したのですが、見つかりません。情報だけが一人歩きしているようです。
⑩天気を予測する照降石
日光東照宮にある「照降石」は、雨が近づくと色が変わる不思議な石として知られています。この石は、石鳥居の前の石段の10段目に位置し、右下半分の色が濃くなることで天気を予測します。
湿度が高くなると黒くなり、翌日からの天気が崩れる兆しとされています。この現象は、昔の参拝者が天候を把握するために利用していたと考えられています。
⑪五重塔の異なる垂木
日光東照宮の五重塔は、1層目から4層目は和様の「並行垂木」を使用し、5層目は唐様の「扇垂木」が採用されています。この設計は、塔の強度を高め、特に5層目の屋根は力学的に頑丈です。
唐様の扇垂木は熟練の技術を要し、宮大工の優れた技術が反映されています。日光東照宮の五重塔は、視覚的美しさと構造的安定性を兼ね備えた重要な文化財です。
扇垂木(一番上の屋根の下)と並行垂木
⑫石鳥居前の階段の道幅
日光東照宮の高さ9メートルの石鳥居前の階段は、遠近法を用いた設計が施されています。参道の手前部分は幅7.5メートルですが、鳥居に近づくにつれて幅が6.5メートルに狭くなります。
この工夫により、鳥居がより大きく見えるように設計されており、訪れる人々に荘厳な印象を与えています。そして、日本三大石鳥居(諸説あり)の一つとしても知られています。
⑬陽明門のパワースポットは石畳の上
日光東照宮のエネルギーの通り道で、「家康の北極星のもとで眠りたい」という願いを叶えるため、夜になると北極星がちょうど真上に位置するように設計されています。
日光東照宮と北極星の強大なエネルギーが陽明門を通り、一直線に家康の霊廟がある奥社へ送られる通り道が、この石畳の上なのです。この石畳は、日光東照宮の最大のパワースポットでしょうか?
⑭竹林で遊ぶ雀
日光東照宮の眠り猫の裏側に彫られた竹林で遊ぶ雀は、2羽の雀が竹林で楽しそうに遊んでいる様子を表現しています。
この彫刻は、猫が眠っていることで雀が安心して暮らせるという平和の象徴とされています。戦国時代の終焉を示し、徳川家康による平和な時代の到来を象徴する意味合いも持っています。
>>日光東照宮の眠り猫の意味と秘密に迫る!どこにあり、作者は誰か?
⑮伝説の職人 左甚五郎
左甚五郎は、江戸時代初期に活躍した伝説的な彫刻職人で、日光東照宮の「眠り猫」など数多くの作品が全国に存在します。
姓の「左」は、左利きだったためや、地元の大工に妬まれて右腕を切り落とされたためとも言われていいる伝説もあります。
>>日光東照宮の三猿はなぜ作られた? 神厩舎(馬小屋)に守護猿を彫った左甚五郎の謎
日光東照宮の七不思議って 15もあるの?[まとめ]
日光東照宮の七不思議について15項目にわたりご紹介しました。
これらの不思議は単なる観光名所としての面白さを超え、歴史や文化の豊かさ、さらには設計に込められた深い思想を感じさせてくれます。
特に、建築や彫刻に込められた象徴的な意味や、陰陽道に基づく計算された設計思想は、日光東照宮を訪れる人々に神秘的な感覚を与え続けています。
これらの不思議を知った上で日光東照宮を訪れると、より深く歴史と文化の真髄に触れることができるでしょう。
次に訪れる際には、今回紹介した不思議を意識しながら、日光東照宮の魅力を存分に味わってみてください。