【千畳敷カール:2023年7月29日訪問】
標高2,640メートル千畳敷カールの世界へ——。
中央アルプス・千畳敷カールは、日本一の高低差を誇る「駒ヶ岳ロープウェイ」に乗ってアクセスできる、まさに雲の上の楽園です。
ロープウェイを降りれば、目の前にそびえる宝剣岳、高山植物が咲き誇る千畳敷カール、そして静寂に満ちた剣ヶ池。
この記事では、そんな千畳敷の魅力を右回りの遊歩道コースに沿って丁寧にご紹介します。
また、歩き疲れたあとの楽しみといえば、ホテル千畳敷で味わう「山の上のごちそう」たち。
テイクアウトのソースかつサンドや、ふわとろ卵の雪山オムライスなど、標高2,640メートルの絶景とともに味わう食事も見逃せません。
読めばきっと、“雲の上の世界——千畳敷カール”を五感で歩いてみたくなるはずです。そんなつもりで、記事を書いてみました。
【目 次】
駒ヶ岳ロープウェイで一気に雲上へ!
駒ヶ岳ロープウェイの往復乗車券
2023年7月29日の日付が印字されたこの一枚が、まさに“天空の旅”のパスポート。
千畳敷カールのスタート地点となるのは、長野県駒ヶ根市にある「しらび平駅」。ここから乗るのが、標高差日本一を誇る「駒ヶ岳ロープウェイ」です。
わずか7分半で、標高差950メートルを一気に駆け上がるロープウェイ。その先にあるのが終点の千畳敷駅(ホテル千畳敷)です。
しらび平駅からロープウェイに乗り込み、幸運にも進行方向最前列の位置を確保。
車内はほどよい賑わいで、小さな子ども連れの家族や、ザックを背負った登山者が、それぞれの目的地に向けて心を躍らせていました。
やがて、「ガタン」と軽く揺れてロープウェイが動き出すと、静かに空気が切り替わったような感覚に包まれます。
眼下に広がるのは、吸い込まれそうな深い緑の海。木々の梢が風に揺れるのが遠くに見えますが、耳に届くのは無音に近い静けさ。機械音さえも最小限で、まるで空中に浮かぶ船に乗っているような感覚。
進むにつれて、窓の外には山の斜面を縫うように流れる滝が現れます。
岩を伝い、何段にも折れて落ちていくその白い水筋は、まるで絹糸のよう。轟音は聞こえないのに、音が「見える」ような迫力に圧倒されました。
岸壁が目の前に迫る、圧巻のラスト数分
ロープウェイも終盤に差しかかると、進行方向の窓一面に岩肌が現れます。
ゴツゴツとした灰色の岸壁が、まるでこちらに迫ってくるよう。息を呑むその迫力に、思わず一歩後ずさりしそうになりました。
岩と空と雲が入り混じるその視界は、まさに非日常。
千畳敷駅の建物が見えてきたときは、「やっと着いた」というよりも、「ここから始まる千畳敷カールのトレッキング!」というワクワクの方が勝っていました。
- 所在地
長野県駒ヶ根市 - アクセス
駒ヶ根ICからバス → しらび平駅 〜 駒ヶ岳ロープウェイ - 駒ヶ岳ロープウェイ往復料金
大人 2,600円〜(時期により変動) - おすすめシーズン
7月~9月(高山植物)、10月(紅葉) - 服装
日差し・寒暖差対策必須。トレッキングシューズ推奨 - 所要時間
遊歩道一周 約40分〜60分
絶景の幕開け:ホテル千畳敷と宝剣岳の迫力
ホテル千畳敷(ロープウェイの駅)
千畳敷駅(ホテル千畳敷)を出るとすぐ、目の前に現れるのがひときわ鋭く突き上がる宝剣岳が威厳たっぷりにそびえ立っています。
千畳敷カール・トレッキング
まずは無事を願って、信州駒ヶ岳神社へ参拝
最初に訪れるのは、「信州駒ヶ岳神社」。登山者やトレッキング客の安全を祈願するこの神社は、木の鳥居と小さな社が印象的。
神聖な空気の中、無事の歩行と天候の安定を祈ってから、いざ千畳敷カールの懐へと歩を進めます。
駒ヶ岳神社の御朱印(ホテル千畳敷の売店で)
駒ヶ岳神社の右手を下ってから、右回りで千畳敷カールの遊歩道を歩き始めます。
千畳敷カールのすり鉢底を歩く
千畳敷カールは、氷河地形によって削り取られたすり鉢状の地形が特徴。その底部を歩くルートは緩やかで、周囲を囲む岩山に包まれた静寂の世界が広がっています。
足元には整備された石段が続き、初心者でも安心して歩けるルート。時折すれ違う人々との「こんにちは」の挨拶も、山歩きの楽しさの一つです。
少し下って歩いたあと、ふと振り返ってみると、緑の絨毯のように広がる高山植物の向こうに、ホテル千畳敷が見えました。
遊歩道には木のベンチがところどころに据えられていて、休憩を挟みながら、自分のペースでゆっくり歩くことができます。
迫力の八丁坂分岐点と宝剣岳の絶景
八丁坂分岐点で分かれる登山と遊歩道
カールの奥へ進むと八丁坂分岐点に到着。ここは本格的な登山道の入り口でもあり、宝剣岳・木曽駒ヶ岳を目指す登山者たちが装備を整えて進んでいきます。
私たちは引き続き遊歩道を進み、ここからは右手に宝剣岳のダイナミックな岩肌を望みながらのトレッキングへと入っていきます(ホテル千畳敷へ)。
左手にも宝剣岳のような見応えのある山並みが続いています。
可憐な高山植物たちとの出会い
遊歩道の両脇には、夏に咲く高山植物たちが彩りを添えます。
- 黄色が鮮やかな「シナノキンバイ」
- 立ち姿の美しい「コバイケイソウ」
- 白い可憐な「ハクサンイチゲ」
- 岩の隙間から力強く咲く「ミヤマアキノキリンソウ」
歩くたびに花の種類が変わり、まるで高山植物の楽園を巡っているようです。
千畳敷カール広場は記念撮影スポット
遊歩道の最後には、千畳敷カールの看板が立つ広場です。ここは記念撮影の名所でもあり、訪れた人たちが思い思いにポーズをとって旅の思い出を写真に残しています。
ベンチも設けられており、歩き終えた余韻を楽しんだり、お弁当をラベたりするにはにはぴったりの場所。
この看板の前での一枚は、きっと一生の思い出になります。
山の天気は変わりやすく、この頃には宝剣岳方面に雲がかかってきました。幸い、雨にはならずに済みました。
私たちを案内してくださった添乗員さんは、親切にも記念撮影のカメラマンを務めてくれていました。なんと、他のバスツアーのお客さんの記念撮影まで手伝っていて、その親切さには思わず驚いてしまいます。
剣ヶ池で出会う、逆さ宝剣岳の神秘
そして静かに佇むのが「剣ヶ池」。風が止まったその瞬間、水面に映るのは…なんと逆さ宝剣岳!
その神秘的な景色には、思わず言葉を失ってしまうほどの感動がありました。池の周囲は静けさに包まれ、自然の偉大さを全身で感じることができる場所です。
最後の一歩:ホテル千畳敷への帰路
広場を後にして、最後に待っているのがホテル千畳敷までの上り坂。
この登りがコース唯一の急な部分ですが、時間にしてわずか10分ほど。振り返れば、ここまで歩いてきたカールの全景が広がり、旅の余韻を噛みしめながらゴール(ホテル千畳敷)へと向かいます。
雲の上で味わうホテル千畳敷のメニュー紹介
歩いたあとのご褒美タイムは、ホテル千畳敷のレストランで。
標高2,612メートルという特別な場所で味わう食事は、身体だけでなく心にも染みわたります。
中でもおすすめされているのが、手軽にテイクアウトできるソースかつサンド。
しっかりと揚がったカツに甘辛いソースが染みこみ、ふわふわのパンで包まれたボリューム満点の一品。パックに入っているので、外のベンチや展望デッキで絶景を眺めながらいただくのも◎です。
また、レストラン内ではバラエティ豊かな温かいメニューが並びます。
一番人気のチーズ香る雪山オムライスは、ふんわり卵にとろけるチーズ、そして濃厚なデミグラスソースがかかった贅沢なセットメニュー。まるで雪山のような白い粉チーズが見た目にも印象的。
ご当地名物である自家製ソース香るソースカツ丼や、信州アルプス牛とスパイスの宝剣カレー、赤ワイン香るたっぷりカツカレーなど、がっつり派にも嬉しいメニューが充実。
洋食派には自家製デミグラスのハンバーグ、軽食には雲海ドッグや信州スモークウインナーのホットドッグといったラインナップも。
食後のスイーツには、抹茶の風味が広がるグリーンティラミスや、涼しげな雲海ソーダもおすすめ。
山の上でも、しっかり満足できる豊富なメニューが揃っています。
雲上の千畳敷カール、訪れたくなる絶景
千畳敷カールは、ただの観光地ではありませんでした。
ロープウェイで空へ舞い上がる感覚、足元に伝わる石の感触、すれ違う人との挨拶、夏には風の爽やかさ、そして剣ヶ池に映る静けさまでも——そのすべてが、心の奥に静かに残り続けます。
本格的な登山に挑むのもよし、整備された遊歩道で無理なく絶景を味わうもよし。
さらに、ホテル千畳敷で楽しむ温かい食事や甘いスイーツが、体験に優しい彩りを添えてくれました。
「また来たい!」「あの人におすすめしたい!」と素直に思わせてくれるこの場所は、季節を変えるごとに違った顔を見せてくれるはずです。
次は、秋の紅葉や初夏の残雪を見に、もう一度ロープウェイに乗り込みたい——そんな気持ちで千畳敷カールを後にしました。