アマテラスの詔（みことのり）
アマテラスは詔（みことのり）を発しました。
「葦原中つ国（あしはらのなかつくに）は、わが子アメノオシホミミノミコトが治めるべきである」
アメノオシホミミは、スサノオとの誓約の時に成った子です。
アメノオシホミミは天浮橋に立つと地上の様子を伺いました。
「葦原中つ国は、たいへんさわがしい」
と、アメノオシホミミはアマテラスに報告しました。
葦原中国への１回目の遣いアメノホヒノカミ
アマテラスとタカミムスヒノカミは、八百万の神を天の安の河の河原に集めました。オモイノカネに思案させて詔（みことのり）を発します。
「葦原中つ国は、わが子に治めさせるべき国である。しかし、荒ぶる国つ神が多くいる。さて、誰を派遣して彼らを説得するべきであろうか」
「アメノホヒノカミがよろしいでしょう」
オモイノカネと八百万の神は相談して、そう申し上げました。
アメノホヒノカミは葦原中国に降りしましたが、オオクニヌシに媚びへつらって、3年も報告することを怠りました。アマテラスとタカミムスヒノカミは困ってしまい、再び八百万の神に相談します。
「アメノホヒノカミからは、3年経っても何の報告もない。さて、次に誰を派遣してオオクニヌシらを説得するべきであろうか」
葦原中国への２回目の遣いアメノワカヒコ
「アマツクニタマノカミの子アメノワカヒコを遣わすべきです」
オモイノカネはこう申し上げました。
アマテラスとタカミムスヒノカミは、アメノワカヒコに天之麻迦古弓（あめのまかこゆみ）と天之波波矢（あめのははや）を持たして葦原中国に遣わせました。
しかし、アメノワカヒコはオオクニヌシの娘シタデルヒメと結婚してしまい、葦原中つ国を自分の国にしようと考えて、アマテラスに報告することなく、8年の歳月が流れてしまいました。
アマテラスとタカミムスヒノカミは、またまた困ってしまいました。
「アメノワカヒコからは８年も何の報告もなく、一度たりと戻ってこない。アメノワカヒコに理由を聞きたいのだが、誰を遣わせたら良いであろう」
アメノワカヒコへの鳴女の派遣
オモイノカネはこう申し上げました。
「鳴女（なきめ - キジ）を遣わすべきです」
アマテラスとタカミムスヒノカミは、鳴女に命じました。
「アメノワカヒコにこう伝えよ、『なんじを葦原中つ国へ遣わしたのは、荒ぶる国つ神を説得させるためである。なぜ、８年もなんの連絡もよこさないのか』」
鳴女は葦原中つ国へ下ると、アメノワカヒコの家の門の木に止まり、メッセージを伝えました。
しかし、鳴女のメッセージを聞いていたのはアメノワカヒコだけではなかったのです。隠密のような役目のアメノサグメも聞いていたのです。
「この鳥の声は良くないから、殺すべき」
と、アメノワカヒコに囁きます。彼は天之波士弓（あめのはじゆみ）と天之加久矢（あめのかくや）を取り出し、鳴女を射殺してしまいました。
すると、なんという弓と矢の威力でしょうか。
天之加久矢はキジの胸を貫通して、高天原のアマテラスとタカミムスヒノカミのところまで飛んで行ったのです。
驚愕したアマテラスとタカミムスヒノカミは、どう対処するのでしょうか？
