天岩屋戸(出典:Pinterest)神宮微古館
【目 次】
母を慕い泣いてばかりいるスサノオ
イザナギは三貴子に命じました。
アマテラスに「高天原を治めなさい」
ツクヨミには「夜之食国(よるのおすくに)を治めなさい」
スサノオには「海原を治めなさい」
しかし、スサノオだけは海原の国を治めることなく、母イザナミを慕ってまるで暴風雨のように泣いてばかりいます。山々はふるえ、木は枯れて、海や川は干上がってしまったほどです。
不思議なことです。スサノオはイザナミの子ではありません。が、イザナミを母と思っていたのです。
とうとう、イザナギはスサノオに問います。
「どうして、お前は国を治めず、泣いてばかりいるのだ」
「私は母イザナミのいる根の堅州国( ねのかたすくに)に行きたいのです」
イザナギは、やむなくスサノオに
「おまえは、この国にいてはならない」
と追放します。
スサノオ、高天原のアマテラスに挨拶に来る
スサノオは母のいる根の堅州国に訪ねることを決心し、高天原にいる姉アマテラスに報告に行きました。
しかし、スサノオが来ると、高天原の大地は揺れるほどでした。
「スサノオが攻めてきたのではないか」
と思ったアマテラスは男神のように髪を解いて両側に2つ結んで、弓を取り、完全武装して弟に対峙しました。
「高天原に、なにしにやってきたのか?」
「私は根の堅州国に行くことを姉さんに報告に来たのです。高天原を奪う、やましい心はありません」
「あなたの心が清いことをどうやって証明できるか?」
「では、誓約(うけい)して子を生みましょう」
こうして、アマテラスはスサノオの十拳剣を三段に割り、水を注ぎ、口でかんで三柱の女神を生みました。
一方、スサノオはアマテラスの勾玉を水で注ぎ、かんで五柱の男神を生みました。この結果から、スサノオは勝手にこう宣言しました。
「私の心が清いから、女の子が生まれたのです。だから、私の勝ちです」
誓約のルールを決めていなかったので、アマテラスは一方的にスサノオに押し切られてしまいました。
アマテラスは怒り、天の岩屋戸に隠れる
その後のスサノオは、高天原でやりたい放題しはじめました。
ついに、機織り小屋の屋根に穴を開け、皮をはいだ馬を投げ落としたのです。驚いた一人の機織り女は持っていた道具で、体を刺して死んでしまいました。
はじめはスサノオの暴挙を許していたアマテラスもとうとう怒り、天の岩屋戸に隠れてしまいました。
さあ、大変です。
天と地は暗くなり、あらゆる悪霊が闇の中を暴れまわります。
オモイカネノミコトの策は「祭り」
八百万の神は困り果て、天の安河原で協議しました。しかし、いい方策はなく「知恵の神」オモイノカネノミコトに任せました。彼は、「祭り」の策を取りました。
まず、ニワトリを一斉に鳴かせます。
次に、後に三種の神器になる八尺鏡(やたのかがみ)と八尺勾玉(やさかのまがたま)を作らせます。
それから、アメノコヤネノミコトとフトタマノミコトに牡鹿の肩の骨と天の香山のカニワ桜で占なわせ、祭りが始まりました。
見事なお供えをし、アメノコヤネノミコトが祝詞(のりと)を奏上します。
そして、アメノタジカラオノミコトが岩屋戸のそばに隠れました。
アメノウズメ(出典:Pinterest)
エロチックなアメノウズメの舞
神楽が始まると、アメノウズメが逆さにした桶の上に乗り踊り始めました。
アメノウズメは舞が進むと、乳房を出し、衣の紐も解き始めます。
もう裸に近くなった女神の舞に、八百万の神は大喜びで騒ぎます。
アマテラスは外があまりに騒がしいのを不審に思い、岩戸を少し開けて尋ねました。
「真っ暗闇の中で、みんなは一体何を騒いでいるのだ?」
アメノウズメが答えます。
「アマテラス様より、尊い神様がおいでです。
それで、私が舞、八百万の神が喜んでいるのです」
この時、アメノコヤネノミコトとフトタマノミコトがそっと鏡を中に入れました。
アマテラスは鏡に映った自分の姿に
『私の他にも、太陽のような女神がいるのだな』
と内心びっくりしました。
驚きのあまり、アマテラスは岩戸をもっと開いて外を見ようとしました。
この時すかさず、アメノタジカラオノミコトが女神の手をつかんで、外に引っ張り出します。同時に、フトタマノミコトは、女神が岩屋に再び入れないように、シメ縄を張ってしまったのです。
この時、アメノタジカラオノミコトが、岩戸を地上に放り投げたとも言われています。落ちた場所が、戸隠山だったのです。戸隠山の頂上がノコギリのようになっているのは、そのためです。これが、戸隠神社の謂れとなりました。
スサノオの追放
アマテラスが天岩屋戸に隠れたのは、スサノオの横暴が原因でした。
八百万の神は議論した結果、スサノオに罪を償わせることにしました。罪をあがなう品物を納めさせ、髭を切り、手足の爪を抜いて高天原を追放したのです。